サッカークイーン、世界一を振り返る

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まさに歴史を変えた人物。

2011年女子W 杯ドイツ大会で主将として日本を世界一に導き、得点王とMVPを獲得。そして男女通じてアジアでは史上初となるFIFA最優秀選手にも選出。その現役生活を振り返ると、まさに世界でもトップレベルの位置に君臨している。

そこまで上り詰めることができた、そこまでの原動力についてこう答えている。

「純粋にサッカーが大好きだったんです」

 

澤穂希

(写真:スポーツこころのプロジェクト

 

彼女のサッカーに対する想いに迫る。

 

 

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■世界一までの道のり

一気に、急速に花が咲いたわけではない。

その道中には多くの壁や困難があったが、一つずつ乗り越え、個人としてチームとしてレンガを積み上げてくことで成長した。

東アジア選手権で優勝し、北京五輪ではベスト4に。最後まで最大のライバルはアメリカだった。

北京の前には当時の佐々木監督から「ベスト4を目標にしよう」と言葉があり、その通りベスト4に入り込んだ。その後、「これからは目標をもっと高くして、世界一を目指す」と話し、世界一を意識するようになった。

 

その後、ドイツW杯ではついに最大のライバルアメリカを決勝で破り、見事世界一に輝くことになる。

その要因について、【華麗なパス回し】が上げられている。

澤「組織がとてもしっかりしていました。試合の映像を見たら、常に11人が同じ感覚で動いて連動していました。そういう練習をしていたし、監督が主力を固定していたのでやりやすさもありました。それぞれ個々の強みを生かして、苦手なところはカバーし合いました」

11人全員が「個」の強みを最大限に発揮した。それぞれの特性をメンバーが理解し、苦手意識は全員でカバーできるように動いた。まさに「組織力」が出来上がっていた。メンバーの個性が生かされ、組織が上手く動き出すとき、それぞれに相乗効果が発生する。1+1が3にも4にもなるというアレだ。この力には無限の大きさがあるのではないかと思わせてくれる。

当時のなでしこジャパンは試合を重ねていくにつれ、この強みを確実なものにしていった。

 

 

■頂点に立つ瞬間

澤自身の強み-。

それを聞かれると「勝負強さ」と答えた。

ドイツW杯決勝アメリカ戦、1点ビハインドの延長後半12分で決めた同点弾。この瞬間を「スロー」だったと振り返っている。

「決勝のゴールの瞬間は全てがスローに見えて、『ゾーンに入るというのはこういう事なんだ』と感じました」

スポーツ選手が極限の集中力の高さに達したときに到達する状態のことを「ゾーン」と呼んでいる。

かつての読売巨人軍で活躍し、「打撃の神様」と称された川上哲治さんも調子の良い打席では「ボールが止まって見える」と発言した。他の競技でも、周囲の存在や雑音や自分の中に現れる雑念が全て消え、その一瞬に最高のパフォーマンスを発揮することがある。この状態では目の前のプレーのみに集中する。一流のアスリートはここぞの場面でこの状態に入りこむことがのぞましい。

澤は決勝戦、優勝のかかった土壇場の場面で、一番の「ゾーン」に入り込んだ。

 

そしてこの優勝の前夜、既に優勝のイメージが浮かんでいたという。

「決勝戦の前日、トロフィーを掲げるイメージが浮かんだんです。延長の時間帯に失点した時も、私自信は負ける気がしなくて、『まだいける』とみんなを鼓舞していました」

 

当然、良い時も悪い時も経験してきた。一つぶれなかったのは、「逃げずに向き合うこと」。

W杯で優勝したときには「サッカーの神様が降りてきた」と感じたという。苦難にめげずに自分に向き合うこと、チームメイトに向き合うこと、チームそのものに向き合うこと。

これをコツコツ継続した結果が、最高の舞台で最高の結果として残された。

【写真:Getty Images】

 

〜MINE’s EYE〜

歴史を変える人物は、皆、積み重ねを怠らない。

いきなり大きな成果を残す人はそうそう存在しない。最も大きな、歴史を変えるような成果を残す人は例外なく、自分自身に向き合い続ける強さを持っている。

 

私自身、学生時代はスポーツ一筋で過ごしてきて、勝負強さはどうすれば身に付けることができるのかと考えたことがある。初めから勝負強い人などいないのではないか、と思う。以前は、「この人はセンスがあるから」とか「この人はもともと能力があった」と考えることもあった。

しかし、その選手がそのレベルに到達するまでにかけてきた時間、想い、積み重ね方、全て欠けても「勝負強さ」は身につかない。いざというときに力を発揮でき得るかどうかは、いつでも同じ結果をだせるほど身についているかどうか。

澤選手も「練習でできないことは試合で絶対にできない」と口にする。

なでしこチームが一つずつ階段を上ってきたように、なでしこの選手一人一人、その中心の澤選手が毎日の積み重ねを決して怠らなかったのだと思う。

 

現役を引退したいま、「サッカーに戻りたいという気持ちはない」と言う。やり残したことがないから、戻りたいという気持ちがないそうだ。

いまやっていること、自分がこれだと思うことを信じて積み重ねること。

これができたときに何か違った結果に出会い、別の自分に出会えると感じさせてくれた。私も信じるものを積み重ねる「強さ」を手にしたい。

 

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