体操を進化させた一人の男

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日本ではほぼ敵なし。

世界でもオリンピック2大会連続金メダル獲得。まさに「キング・オブ・体操」のアスリート。

【内村航平】選手(以下、内村)の道のりを知る。

(写真:毎日新聞 2016年8月11日

 

 

世界一の練習量

初めて世界の頂点に立ったのは’09年秋、ロンドンでの世界選手権。

前年の北京五輪では団体・個人共に銀メダルを獲得した内村は、その1年後に日本史上最年少で世界王者に輝いた。

「北京で『次の五輪は金メダル』といったのですが、まずは世界選手権で優勝しないと始まらないと思っていました。でも、この内容では3年後に金メダルをとれない。これからは今までの10倍練習します」

内村はロンドン五輪に向けて、「世界で一番練習した者が世界一になる」という言葉が口癖になった。

そして「前回優勝したことで周囲の目線が変わった」という翌’10年の世界選手権では、2度目の個人優勝。

周囲の期待や重圧を結果で返した。

 

団体にも抜かりがない。

「個人のメダルも嬉しいけど、みんなで力を合わせて獲ったメダルには全然違う重みがある」

個人の記録や結果ももちろん大事だが、「子供の頃から日本の体操といえば体操だった」と、自分の力や技を団体にも同様に発揮した。

そして’12年のロンドン五輪。当時23歳の時に、個人総合で金メダル獲得。団体でも持てる全力を出し切ったため、多少オーバー気味になりミスがでた。

しかし目標であった五輪での金。

「夢のよう。世界選手権で3連覇しているけど、オリンピックはやっぱり重みが違う。日の丸が揚がっていくのを見て最高だなと思いました」

オリンピックに懸けていた。北京で銀メダルに終わった時から、五輪の借りは五輪でしか返せないと思っていたに違いない。

一つ気になるのは、なぜ、アスリートにとって、オリンピックは特別な舞台になるのか。

そう感じるのも人それぞれかもしれない。オリンピックには独特な、他の大会とは違う何か目に見えないものが流れているのからか。

 

 

「体操」の進化

内村は圧倒的な王者だった。圧倒的で絶対的だった。

世界選手権を5連覇。’15年の世界選手権では、個人総合、団体ともに金メダル。個人では6連覇、団体では37年ぶりの世界選手権優勝に導いた。

この日本体操界を支えた快進撃は、決して内村の独壇場ではなかった。彼の後を追うように、山室、加藤、田中や白井など、個人でメダル獲得をする選手が続々と増えた。日本全体の底上げが行われていたのだ。

快進撃は止まらず、翌年のリオ五輪でも団体で悲願の金。そして2日後の個人総合でなんと、44年ぶりの五輪連覇を達成。

 

「最後の鉄棒がすごくよかったので、鉄棒で負けるなら悔いはないと思いました。体操の面白さや難しさを伝えられたことが、勝ち負け以上に嬉しいです

やり切っている。

内村の記録とその体操競技を見ていると、結果よりももっと上のものを求めているように感じる。

「体操は良いイメージに近づけたと思うとまた理想が上がる。その繰り返しなんです」と語るように、内村はゴールを結果には設定していない。

彼が「体操そのもの」を背負って日々戦っている、とわかる言葉がある。

「この8年間で僕が個人総合のレベルを一気にあげたと思っています。今後は僕以上の選手が出てくるはず。そういう意味で、体操の進化に貢献できているのではないかと思います」

 

現在、31歳。

体も首から下は満身創痍だという。それでも内村は東京五輪を「人生最大の目標」と位置付ける。周囲は10代の選手がほとんど。

「逆境は嫌いじゃない。最後に逆転すれば、人生最大の奇跡になる」

もう一度、どでかい花を咲かせようとしている。

(写真:田村翔/アフロスポーツ

 

 

〜MINE’s EYE〜

内村が以前このように語っていたことを目にしたことがある。

「地べたから這い上がるという反骨心が僕のベースにある」

 

彼もまた、現状に全く満足していない。満足どころか未だ理想を追い求め続けている

アスリートをしているとそんな心境になるのだろうか。

もう一つ印象に残ったのが、

体操の面白さや難しさを伝えられたことが、勝ち負け以上に嬉しいです」

という言葉。

 

もはやメダルや優勝のためにやっているという感じがしない。

もちろん自分の競技に没頭し、大きな大会で優勝すればとても嬉しいはず。でもそこがゴールではないことが明確。

 

以前、野球のイチロー選手が引退会見の際に「野球の研究者」になりたい、と口にした。

私としてはこの感覚と似ているのではないかと思う。その道を極める者。求道者。

 

体操を愛し、体操を進化させるために自分の肉体と精神を限界まで追い込んでいる。

内村はどんな「ゴール」を想定しているのだろう。

今後も目が離せない。

 

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