世界一までのピッチング

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2013年10月、95年ぶりとなるボストン本拠地での世界一。

この瞬間にマウンドにいたのが、38歳日本人選手。
元メジャーリーガー・ボストンレッドソックスの上原浩治だ。

この歴史的な日のことを、7年経った今、本人の言葉で振り返る。(参考:number1002号

 

苦労の歩み

「ざまあみろ!っていう顔してたと思います。誰にざまあみろかって言ったら日本のメディアですよ。だって、シーズン中は全然、僕を取材にきてなかったんやから」

メジャーでは怪我も経験し、球団も渡り歩いてきた。ボストンに来たのは’13年で最初は敗戦処理の役割だった。しかし、シーズン中盤の6月、本来のクローザー候補が怪我による離脱をし、ファレル監督から「クローザーをやってくれ」と頼まれた。上原がクローザーの代役に選ばれたのだ。

上原の気持ちを動かしていたのは、反骨心もあった。シーズンが進むにつれて、チームはますます調子を上げていき、地区優勝、優勝決定シリーズ進出とその勢いは止まらなかった。

「シーズン中は記者ひとりもいない時もあったのに、ワールドシリーズだけワーっと取材にこられて、それって違うやろ!って思ってたんです。僕、そういう気持ちだけで野球やってきましたから。なんせ、反骨心の塊なんでね」

日本のメディアに対する反骨心も、上原を世界一にする原動力になった。

 

世界一までの13球

【写真:Getty Images】

 

世界一を決めるワールドシリーズ。その戦いに王手をかけて挑んだ一戦。

最終回、6-1の5点リードの場面。最後を締めるのは上原しかいなかった。

このシーズン、最後の回は上原が支え続けてきた。先頭打者は8番ジョン・ジェイ。1球目に伸びのある真っ直ぐが外角低めに決まる。スピードガン表示は141km。上原は「僕の中では151kmです!」と主張する。これはハッタリでもなんでもなく、上原の投げるボールはキレがあるゆえ、表示より体感は早く感じる。そして2球目に低めにフォークを投じ、レフトフライに打ち取った。

「アウト1個とったことで、いけるな、という気持ちにはなりましたね。点差も5点あったので、2〜3点は取られてもいいやって、余裕を持って投げられた」

そしてテンポよく2人目の選手も打ち取り、いよいよあと一人に。この瞬間、ボストンの本拠地は95年ぶりの世界一を目前に「コージ」コールが鳴り止まない。

「いや、それよりも、早く終わりたいなあって気持ちの方が強かったですね。正直、このシリーズは多分勝てると、僕自身はやる前から思っていた。それぐらい、1年ずっと調子が良かったんで」

 

この年、上原はシーズンを通して本当に絶好調だった。

レギュラーシーズンでは自己最多の73試合に登板し、4勝1敗21S13H、防御率1.09。ポストシーズンでも13試合で1勝1敗7S、防御率0.66。計86試合。これはこの年のメジャー最多登板数でもある。

完璧にゾーンに入っていたんです。もう、何をやってもうまくいく。絶対に打たれないという自信があった。ゾーンに入ったんは中継ぎをやってた頃から。毎年、1ヶ月ぐらいはそういう時期があるんですけど、最後まで続いたのはあの年だけでした」

 

そして最後の打者。ここを抑えれば試合が終わる。

1球目はストレート、この日最速の143kmが決まりストライク。2球目、3球目は外に外れてボール。4球目、5球目、6球目はファウルで粘られる。打者も粘り強く、なかなか簡単には終わらない。

「でも僕自身は、粘られてる感じはなかった。とにかく歩かせるのだけは避けようという気持ち。追い込んでからの四球って、しらけるやないですか。僕には真っ直ぐとフォークの2種類しかないんで、打者はどっちかにヤマ張っとけばいいって考える。そこをコントロールで打ち取るのが僕のピッチングですからね。投げ損わなかったら、まず大丈夫やろう、って思ってました」

生命線であるコントロールには自信がある。ストレートとフォークのみの2球種。精密機械のようにi一寸の狂いもない制球力を武器に、1イニングをずっと支えてきた。

そしてこの夜の13球目。上原はウイニングショットのフォークを投じる。バットは空を切り、空振り三振。上原本人は「狙ってました」と力を込めて言った。

「東地区優勝、地区シリーズ、ア・リーグ優勝決定シリーズと、僕は最後に投げて、すべて空振り三振で締めてきた。だから、このワールドシリーズも空振り三振で終わりたかった。優勝決定の4試合を全部、最後に空振り三振をとって世界一まで行った投手は多分、僕が史上初だと思うんです」

 

まとめ:世界一の裏には「悔しさ」があった!

✅反骨心が人を動かす原動力になる
✅うまくいくこと(成功)の裏には、苦労がつきものである

 

上原浩治は「雑草魂」でよく知られている。本当に心の強い選手だと思う。逆境のすべてを反骨心として自分の力に変えてしまう。

アスリートにとって、「何くそ!」「見返してやる!」という気持ちは重要なのかもしれない。うまくいくことばかりではないし、大半が思うようにいかないことばかり。そんな状況でも目の前の現実から逃げず、自分と向き合える強さを持っていたい。

 

 

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