そのアスリートが一流かそうでないかを分けるのに、勝負どころでの強さが一つのKeyになる。
試合を決める重要局面、試合終盤の中で、自分の力を遺憾なく発揮できるかどうか。それを決定するのは、心、メンタルの状態が大きく関係すると言われている。
トップクラスのアスリートは本当にこういう場面に強いのか、各競技から得られる「数字」によって解明していこう。
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バウンスバック率
プレッシャーのかかる状況下、そこに打ち勝つ強心臓ぶりはどうやってわかるのか。なんとなく「あの選手はプレッシャーに強い」と評されることはあっても、具体的に何が強いのかまでは示されていないことが多い。今回、全部で3つのデータを紹介していく。
まず一つに、「バウンスバック率」
「スポーツにはミスがつきものー。」
これはすべてのアスリートが受け入れなくてはいけない事実である。どんなに優れた選手でも必ずミスはする。そこで最も重要なのは、ミスをした後に気持ちを切り替える早さと言われている。ミスをズルズルと後のプレーにまで響かせないことだ。
この能力の強さを示しているのが、近年、ゴルフ界で一躍注目を浴びた渋野日向子選手の「バウンスバック率」だ。
つまり【修正能力】だ。
’19年の国内女子ゴルフツアーでのバウンスバック率を見ると、渋野が1位につけている。中でも2位の選手とは4ポイントほどの差をつけており、ダントツの数字を誇っている。その率は26%。4回に1回は、ミスの後に挽回しているのだ。(出典:number 1007号 『メンタル・バイブル 2020』)
そのバウンスバック率について問われた渋野は、
「ボギーを打った後は怒っちゃうので、それを(次のホールに)ぶつけて、攻めています」
と語っている。
渋野自身、小学生時代に取り組んでいたソフトボールで気持ちの「切り替え」について身につけたという。
「自分が打たれたりしても、気持ちを切り替えて次、ってやって行かないといけない」
渋野は過去、スポーツで得た経験を現在に活かしている。切り替える意識の積み重ねによって、メンタルを鍛えることは可能だと証明してくれている。
対プレッシャー強度
二つ目、「対プレッシャー強度」
接戦で迎えた試合終盤、緊迫した場面で力を発揮できることもメンタルの強さを証明する。
この総合順位で5位につけているのが、錦織圭。
特に突出した数字を残しているのが、「最終セット勝率」
(出典:number 1007号 『メンタル・バイブル 2020』)
キャリアを通じて74.9%の数字を残している。世界ランク1位のノバク・ジョコビッチと比較してもその率は上回る。
自身でも
「自分の中でファイナル(セット)になると上がってくるような気はする」
と述べているように、終盤での強さを自覚している。
このデータから錦織は、決定力があるとも言えるだろう。
横綱の平均金星配給数
最後に「横綱の平均金星配給数」
勝つことが使命づけられた横綱という番付。1敗しようものなら、「金星配給」として波乱扱いされる。
そんな重圧のかかる中での戦い、その配給比率が特に低い横綱を見てみよう。
1場所平均の金星配給数5傑 (number 1007号 『メンタル・バイブル 2020』) |
||||
順位 |
力士名 |
1場所平均 |
金星配給数 |
在位場所数 |
1 |
玉の海 |
0.3 |
3 |
10 |
2 |
玉錦 |
0.333 |
4 |
12 |
3 |
白鵬 |
0.342 |
26 |
76 |
4 |
大鵬 |
0.483 |
28 |
58 |
5 |
千代の富士 |
0.492 |
29 |
59 |
配給数が最も少なかったのは玉の海の「3」。10場所、横綱に在位してわずかに3回しか金星を与えていない。
また、現在も現役で四股を踏んでいる「平成の大横綱」白鵬は、僅差で3位に。驚くべきは在位場所数は「76」という圧倒的な数字ながら、1場所平均で約0.3のみの金星配給数である。
1ミリたりともスキを見せられないという重圧に向き合い、勝ち続けるためには、間違いなく強い心が必要だ。横綱になる力士は何十人といても、「勝利し続ける」ことが難しいのだ。ここが一流と「超」一流を分けるのかもしれない。