ゴルフ界、日本史上初の世界ランク1位獲得。
意外にも、ナンバー1の記憶は栄光のみではないらしい。
【宮里藍】
(写真:四国新聞 2017年5月17日)
日本ゴルフ界に大きな功績を残し、世界中のゴルファーとファンの注目を集めた。
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愛される選手になりたい
「1位だった間は辛い思い出しかないんです。結構きつかったなって」
ゴルフでも1位の定義として曖昧なところがある。それはツアーで勝てば1位といえるし、世界ランク1位になれば紛れもない1位となる。
1位になること、1位でいることは別物だったのだ。
「自分のイメージとのギャップやプレッシャー、そういうものの狭間ですごく揺れていて、自分らしくいられた時間があまりなかった印象が残っていますね」
2010年、年間5勝を挙げたシーズンにこういう印象を受けたそう。1位になって嬉しいはずが、逆に苦しみを味わっている。
宮里藍(以下、宮里)にとってのナンバーワンとは?
彼女の内側には、単に順位による1位という位置づけではなく、【理想】とするナンバーワン像があった。
女子テニス界では、2006年から世界ランキング制度が導入され、翌年から3年王座を守り続けた選手がいる。ロレーナ・オチョア(メキシコ)。
宮里はそのオチョアの陽気さ、親しみやすさに憧れを抱いた。彼女の出場する試合には、メキシコ系移民が多く集まり、優勝争いをするとロレーナのだいがっしょうが始まる。これが「理想の世界一」。
「こういう人が本当にみんなに応援される人なんだというのを見せてもらいました。だから自分もただかっこいいだけじゃなくて、愛されるような選手になりたいなとロレーナを見て思いました」
1位になることの意味
2010年に5勝を挙げ、世界ランク1位に。そこから悩むことが増えた。
「今考えても不思議な心境でした。私は完璧主義なところがあるので、世界ランク1位=強いというイメージがあって、それと自分が合っていない気がしたんです。年間5勝してたら相当良いはずなのに、自分の中にその感覚がなくて、周りから強いって見られているのかな?と悩んでいました」
この言葉、この想いから宮里の自分に対する期待値、理想がとても高みにあることが分かる。
その想いの裏には、ゴルファーにとって価値の高い「メジャー制覇」があるのかもしれない。
「私は小さい頃からの夢はメジャーチャンピオンだったので、当時は世界ランク1位になった喜びよりメジャーを獲れない悔しさのほうが大きかったです。でも引退後、他競技の選手と話をさせてもらって気づきました。何の世界でも1位になるのは本当に難しいんだなって。」
現役中はあまり自分のことを褒めてあげられなかったけど、引退してからは少し1位になれた自分を褒めてあげることができたのだと思う。
(写真:ゴルフニュース 2005年8月21日)
〜MINE’s EYE〜
印象的なのは、1位になっても「自分らしくいられた時間があまりなかった」といった言葉。
アスリートは皆、1位を目指して戦う。1位になれた時に、それまでの苦労が全て報われて、全てハッピーになるような、そんな世界をイメージしていた。
でも宮里は1位になってもそんな心境とは真逆だった。ロレーナという「理想の世界一」を知っているので、そのギャップに悩んだ。
宮里さんの考え、アスリートとしての生き方から学んだこと。
それは評価・順位・位置づけはあくまで参考指標、真に重要なのは、自分の理想に近づくこと。
強さの定義は人によって様々だと思う。
でも私も自分が目指したい姿、自分が納得した生き方を追い求めて生きていきたいと感じた。
人が世界ランク1位になったら凄いというから目指すのではなく、1位になった先にどんな自分の姿があるのか、それを想像した時の方がワクワクする。
宮里さんはそれを追い求め続けたから強いアスリートだったんだと感じた。
本当にかっこいい生き方だ。