若き日本最速スプリンター

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サニブラウン・アブデル・ハキーム/Abdul Hakim Sani Brown (JPN), SEPTEMBER 28, 2019 - Athletics : IAAF World Championships Doha 2019 Men's 100m Semi-final at Khalifa International Stadium in Doha, Qatar. (Photo by YUTAKA/AFLO SPORT)
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2019年5月。

一人の男が日本陸上界に新たな歴史を刻む。

100mで9秒99の日本人2人目となる9秒台をマーク。そして6月の全米大学選手権で9秒97の日本記録更新。

勢いは止まらない。

6月下旬の日本選手権では100mと200mで2冠達成。現在、日本では彼の右に出る者はいないほど、文句なしの【日本最速】を手に入れた。

サニブラウン・アブデル・ハキーム

現在21歳の若き期待のアスリートである。

サニブラウン・アブデル・ハキーム/Abdul Hakim Sani Brown (JPN),
SEPTEMBER 28, 2019 – Athletics :
IAAF World Championships Doha 2019
Men’s 100m Semi-final
at Khalifa International Stadium in Doha, Qatar.
(Photo by YUTAKA/AFLO SPORT)

 

Contents

9秒台の世界で思うこと

スポーツの中では最もシビアな世界かもしれない。

100m走は0秒01を競う世界。世界中のスプリンターはこの0秒01を縮めるために膨大の時間を要し、日々の準備・努力を重ねている。

しかしサニブラウン本人はこの”0秒01”を周囲ほど過剰に捉えてはいない。

「みんな騒ぎすぎですよ。日本最速とか日本一って言われても、世界ではまだまだですし。9秒99や9秒97で『9秒台です』って言われてもピンときません。誤差だと思ってるので」

実際に、全米大学選手権の準決勝では9秒96(参考記録)を出したことがあったが、確かにその時は2.4mの追い風が吹いていた。風という自分以外の力によって、0秒01単位の記録は変わる。サニブラウンはそこにこだわらない。

それ以上に本人が重きを置いていることは、たった10秒ほどの一瞬の本番に向けて、日々ベストの準備をすることだった。

【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

 

メダルの先にあるもの

東京オリンピックにも、驚くことにさほど敏感になっていない。

多くの日本人アスリートがこの東京五輪で結果を残すことに燃えるなか、サニブラウンは至って冷静な心境だった。それには現在の拠点がフロリダにあることもあるそうだ。

「2週間、東京に遠征に行くような感じになるのかなと。『東京五輪だ!』って思うのは開幕の10日くらい前になると思います。それまでは淡々と練習を積んでいくだけです」

 

意識の先は、0秒01の先、0秒1の世界だ。

「9秒90、9秒8台がでたら、『ちゃんと9秒台で走れた』と感じると思います」

その新たな9秒8台の世界を出すことに、「いつも通りに走れば出る数字だと思うので」と、自信を見せる一方、当然そのむずかしさも認識している。

「0秒1縮めるためには、練習からちゃんと取り組まないといけない。1日1日の積み重ねが大事なんです

メダルの色やでは順位ではない。

自らの限界に挑戦するという姿勢にファンや周囲の人々を惹きつける魅力がある。

【写真:2019年9月28日、久保玲撮影】

 

〜MINE’s EYE〜

0秒01を自分の人生のなかで意識することはほぼない。

スプリンターの世界ではこの一瞬で勝負が決まる。皆、0秒01先にいるために、多くの鍛錬を積む。

ある意味一番過酷で、一番繊細な競技かもしれない。

一番になれば、【世界最速】の名を手にすることができる。

アスリートは皆、そんな称号や順位を得ることで、満足や達成感を感じるのかと思っていた。

 

しかし、サニブラウンにはメダル同様、いやもしかしたらそれ以上かもしれないほど重要な目標が見受けられる。

東京では後悔のない走りをしたい」

若い選手でもあり、喉から手が出るほど結果が欲しいはず。そんな状態で、サニブラウンが発したこの言葉に惹かれた。

メダルというものには相手があること。自己がベストでもメダルに届かないことがあるかもしれない。でも自分がベストを尽くした。やるべきことをやった。そういうレースができたら満足です」

ライバルは他人ではない。自分。

 

こうやって日々、自分に向き合って、時に打ち勝ち、時には負けることもあるかもしれない。

でも毎日ベストを尽くし、自分自身に打ち勝つことで、満足できることを、サニブラウン自身が知っている。

 

私がトップアスリートたちに惹かれる理由はここにある。

生き様、考え方、強さ。

 

 

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