世界で最も多くのホームランを打った男

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人生の中で世界No. 1になれる人間は極々わずか、ほんの一握りのだけである。

野球は「ベースボール」から生まれた。その歴史は長く、1876年、アメリカでメジャーリーグが発足。メジャーリーグといえば野球の最高峰、そして日本プロ野球と比較すれば50年以上の歴史がある。今でも各国の野球を極めたスーパースターが集う。

その中、日本プロ野球のみでメジャー記録を塗り替え、そして今もなお破られることのない記録を所持しているレジェンドがいる。

 

王貞治という男

(写真:ベースボールonline

 

868本。

現役生活で放ったホームラン数。そして現世界記録。

誰も辿り着いたことのない景色を独り占めしている。現役を退き40年経つ今、そんな男はどんな気分で過ごしているのか。

 

「1000本いけたかなという思いもある。」

 

驚きだ。世界の頂に立ってなお、こんな言葉を口にする。868本では物足りなかったと言うかのように。

 

王は当時のことをこのように振り返っている。

「1本打ったらもう一本、22年間それをずっと追い続けてきたのは良かったかな。僕はホームランに対して常にハングリーでいられたと思うんだよ…
-でもね、756本(当時の世界記録)を超えてからは、なんでもっと野球に対する姿勢を貫けなかったかなと言う思いがあるんだよ…」(出典:Number 1000号『ナンバー1の条件』

決して衰えることのない探究心。世界記録を塗り替えたのは、当時37歳の頃である。

野球選手としては晩年の年齢。世界記録を作って、年齢も重ねてきた頃に引退を想像するどころか次の一本、次の一本を追い求めたいた。

「1位と2位では全然違うということなんですよ。ナンバーワンになれば、またそこにいたいと強く思うようになる

ナンバーワンであることの味をしめてしまった、ということだろうか。そこに居続けることが自分の姿だと言わんばかりに、探究心が衰えることはない。

 

 

「勝利」に対する貪欲さ

(写真:「コーチの神髄」2016年12月16日

 

王は父の生き様に影響を受けた。

中華料理店を営む父は、お客に出す料理も、家族に出す料理も全て本気だった。どんな人に出す料理であっても手抜きをすることができない。料理、仕事に対するプロとしての思いを、王は身近で感じ取っていた。

それは王の選手時代、監督時代に生かされる。

「オープン戦でも休むことなく、同じ気持ちで打席に立つ。やはり僕も野球に対して手が抜けなかった。」

監督時代は勝利に貪欲だった。

勝てばしんどいことを忘れることができて、また勝とうと努力できる。負ける人はずっとしんどいから努力できなくなってくるんだよ。

 

 

「1」の積み重ね

王はホームランを打ち、ベースを回る、そしてホームベースを踏んで得点を決めたその瞬間にそのホームランのことを忘れる。

王:「フェンスを越えても納得できないものもある。もっと強くもっと遠くにとずっと考えていました。結果そのものより、質を求めたいたんです。」

安打製造機で、日本でもメジャーリーグでも活躍したもう一人のレジェンド、「イチロー」も同様だった。良い結果に浸る姿勢よりも、その裏にある無数の凡打や己の弱さに目を向けることを繰り返した。

イチローもかつて、日米4000本安打を打った際の会見で自分の記録をこう振り返った。

イチロー:「4000本のヒットより、僕の数字で言えば4000のヒットを打つために8000回以上の悔しい思いをしてきている。そこに向き合ってきたという自負はあるので…誇れるとしたらそこじゃないかなと思います。」

 

二人に共通していること。目に見える【記録】の話ではない。プロとしての【見せ方】や【姿勢】、【ハングリーさ】が半端ではないのだ。

王は13年連続でホームラン王のタイトルを取得し、35歳で迎えたシーズンでついにタイトルを逃した。このシーズンは故障で出遅れたため、それが原因となり逃すことになった。

しかし、「あの年は1年通して良いコンディションで戦えなかっただけ」と、翌年に49本のホームランを打ってタイトルを奪い返した。

この気持ちが、終わりのない気持ちがずば抜けている。

決して現状に満足しない姿勢に心を打たれた。本当にトップに立つ人間はここまで突き抜けているんだと強く感じた。

「人や物に対するハングリーさには限界があると思うんですよ。ただ数字や野球、バッティングという物に対しては無限なんです。終わりがないんです。」

80歳になった今でもホームランを打ちにいきそうな言葉だ。

756本を打った後の自分をいまだに悔いるような発言に本当に驚いた。

「自分としては残念だよ。達成感に浸ったと、そう思われるのが嫌だね。もうちょっとやりようがあったかなと思うし、そうしたらもっと野球ができて1000本行けたかなという思いもある。だって一度しかない人生だから、とことんやりたいじゃないか。」(出典:Number 1000号『ナンバー1の条件』

現役を終えても打席フォームに衰えはない

80歳になってもその打席フォームに衰えがない(写真:ミドルエッジ

 

〜MINEの視点〜

ホームランキングの内なる想いに触れるたびに驚かされる。なぜ世界一になってまで、探究心や向上心が衰えることがないのか。

だから世界一になっているといえばその通りなのだが、80歳になってもなお、この気持ちが衰えないことに本当に驚いた。

同時に若い私が歩を止めている場合ではないと強く感じた。

結果を残すのがプロ。そして超一流はその質、振る舞いや選手としての在り方まで求めている。

人の心を動かす選手」はこれを体現できる選手なのかもしれない。プレーや背中でその人の生き様を見せることができる。

 

私は中学生の頃、当時の野球チームの恩師に言われた言葉を今でも時々思い出す。

「言葉ではなんとでも言える。将来、グラウンド上で、自分のプレーによって、日頃の【感謝】の気持ちを表現できる選手になろう。」

あの頃、とても体現はできていなかったかもしれない。でも気持ちの入ったプレーは人に伝わる。

人がスポーツに見せられる理由はそんなところなのかもしれない。

 

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