【大坂なおみ】人種問題とスポーツ

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2020年9月、大坂なおみが全米オープンで自信2度目の優勝を果たした。

今大会の戦いは、大坂自身のテニスによる戦いだけではなく、「社会的」な戦いも含まれていた。

 

人種差別との戦い

(写真:スポーツ報知

 

全米オープンの前哨戦、ニューヨークの同じ会場でウエスタン・アンド・サザン・オープンが行われた。その大会で、大坂なおみは準優勝した。

準優勝を決める前、アメリカで黒人男性が白人警官に背後から銃撃されて重体となった事件を引き金に、再燃した『BLACK LIVES MATTER』運動。アメリカのプロスポーツで起こっている抗議活動の事実を知った大坂は、「自分も声を挙げなければ」と使命感に駆られ、準々決勝に勝利した日の現地の夜8時頃、「明日は試合をしない」と自身のツイッターにてコメントしている。

「私はアスリートである前に黒人女性です。今は私がテニスをする様子を観るよりも、重要なことがあると思います。また、白人が多数を占めるスポーツにおいて問題提起を行い、会話を始めることができれば、正しい方向への一歩だと思う」

 

それは『抗議の棄権』と世界中に報じられた。するとその約3時間後、女子ツアーを管轄するWTAと男子ツアーのATPとUSTA(全米テニス協会)が共同で声明を出した。

「テニスは競技として、アメリカで再び起きた人種差別や社会的な不公平に対して結束して反対する立場をとっている。いまこの時点において、USTAとATPツアー、WTAは、ウエスタン・アンド・サザン・オープンを一時休止することでその意を表したい。27日は試合を行なわず、28日に再開する」

協会もこの動きに支持する形となったのだ。

 

全米の開幕

(写真:朝日新聞 9月16日

 

ウエスタン・アンド・サザン・オープンで準優勝を決めた大坂は次なる戦い、同会場での全米オープンに挑んだ。

ここでの大きな動きは、全米オープンを主催するUSTA(全米テニス協会)が打ち出した『Be Open Campaign』。これは、大坂の抗議行動を許すためのキャンペーンといってもよかった。

本来、全米オープンを含めたグランドスラム大会では本来、政治的・社会的メッセージを表現するものを選手が身に付けて試合に臨むことを認めていない。しかし、開幕の4日前に発表されたこのキャンペーンの一環で、今回は選手が人種差別、性差別、同性愛者への差別といった問題についてメッセージを発信することを許していたのだ。

「USTAは人種の平等を実現することに努めている。多様性を認め、ともに生きるという我々の方針は、テニスのさらなる繁栄にもつながると信じる。テニスは、人種、性別、性的指向、その他いっさいの特性に関わらず、どこの誰であろうと、参加し、プレーし、競えるスポーツでなくてはならない」

 

そして大坂はこの大会、白人警官や自警団による暴力によって死亡した被害者の名を1人ずつ記した7枚の黒いマスクを用意。1回戦から決勝までの7試合全てで、入退場時とコート上のインタビューでそれを着用した。

その行為には、アスリート以前に黒人であること、その差別に対して抗う使命感のようなものが働いていたのではないだろうか。

 

大阪の一連の行動に対し、政治的な出来事やそこに対する感情をスポーツに持ち込むなという批判的な意見もある一方、アメリカでは多くの称賛の声も上がった。

ここまでの影響力が自身にあることをおそらくここまで認識していなかった。その影響力への驚きもある中で、大坂はこう語っている。

「一生懸命泣かないようにしていました。彼らが私のしていることに感動してくれているということが、私にとってはとても感動的でした。私は自分にできるかもしれないことの中から、ほんの小さなことを1つ実行しているだけです。本当にありがたいし、身が引き締まる思いです」

被害者の名前が記された黒マスク。
決勝までいくことがなければ、全7枚を使い切ることができなかった。

大坂はトップアスリートとして自分に課せられた使命を誰よりも認識している。結果として、決勝まで勝ち上がり、この大会で優勝してしまうのだからすごい選手である。

彼女が世界に見せた抗議や姿勢は、人類は皆平等であるという強いエネルギーを纏ったメッセージに思える。

肌の色の違いによる差別があってはならない。全人類が向き合わなければならない事実に、まずはテニスのトッププレイヤーが向き合ってくれた。

記事参考:Number Web

 

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