2019年6月21日(現地時間20日)にNBAドラフトが開催された。
NBAは全米4大スポーツの一つ。プロバスケットボールの最高峰リーグである。
この日、八村塁選手(以下、「八村」敬称略)がワシントン・ウィザーズから1巡目9位で指名され、日本出身のバスケ選手として歴史を作り上げた。
それは体力面や環境面で課題のあった日本バスケ界にとって、本当に大きな一歩になった。この日は八村にとって、そして日本にとっても大きな意味のある1日だった。
ドラフト1巡目9位で指名 [写真]=Getty Images
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好きだから、やる
八村はかつて、インスタグラムでファン向けにライブ配信をおこなった。
そこでファンからの質問にこんな投稿があった。
「NBA選手になるためにどんな努力をされましたか?」
この質問に対して、八村は「好き」を強調した。
「努力するために努力するのではなく、好きだから、努力できる。普通に好きだったら、普通に努力するんですよ。自分でもっとやろうと思いますし、もっと研究するじゃないですか。好きだから。そこが絶対に大事だと思います。」
努力を努力として感じない。八村は単に大好きなバスケットボールをやってきただけと言う。
一生懸命を楽しむ
ウィザーズの八村塁【写真:AP】
八村少年は、どのようにしてNBA選手までの道のりを歩んできたのか。
中学1年のとき、友達に誘われて仕方なく行った練習がきっかけでバスケに夢中になった。NBAの一流プレイヤーやアメリカの高校生のプレイヤーの動画を見て刺激を受けた。
「自分もこう言う風にやってみようと思ってやって、いろいろ自分で覚えていくのが楽しかったです」
大学ではアメリカのバスケ強豪大学、ゴンザガ大に進学。1年時に控えだった八村は試合前の円陣でチームの誰よりも高く、何度も跳んだ。
「来年はこの時間帯に試合に出る。だから、自分のこの身体に覚えさせたい」と説明する。
八村がモットーとする言葉がある。
【一生懸命を楽しむ】
「僕のバスケの根本。楽しいからずっとやってこれているんじゃないかなと思っていますし、これからも、それを忘れないでやっていきたい」
良い言葉だと感じる。
このバスケに、全身全霊を捧げる覚悟で取り組む。まさに命を懸けて、バスケに取り組む。そしてそれをやっている自分を楽しむ。
楽しいから続けられるし、向上心を捨てずにやり切ることができる。八村選手はまだまだ成長する。
日本バスケを盛り上げる
2019年12月14日(日本時間15日)の試合では、『ジャパニーズ・ヘリテージ・ナイト』と称され、ウィザーズの八村塁とグリズリーズの渡邊雄太がともに出場し、NBA史上初の日本人対決が実現した。
NBA史上初の日本人対決!しかしウィザーズ敗れる。八村塁選手は10得点、4リバウンド。渡邊雄太選手は7分で3リバウンド、プラス8#repthedistrict pic.twitter.com/lmpbZdMs8F
— ワシントン ウィザーズ (@washwizardsjp) December 15, 2019
NBAのスーパースター、レブロン・ジェームズも八村について、こんなことを言っている。
「とても才能のある選手だと思う。身長も強さもあり、試合感覚も優れている。とても落ち着いている。良い選手だね。」
八村本人がこの言葉に対してどのような気持ちを抱いているかはわからない。
しかし、日本で育ったバスケ選手が、確実に評価を受けている。日本バスケ界にとっては大きな快挙である。
何よりのたくましさは、八村の意気込み。そして自分に対する「期待」である。
「僕は全然、こんなんで終わりじゃないです。今はまだ(NBAに)入っただけじゃないですか、嬉しいですけど、人生、これで良いんだとは全然思っていないです」
NBAへの思い、そして今後日本バスケについても思いがある。
「日本バスケを盛り上げることができたらな、と。あとは小さな子たちに勇気とか夢を与えられたら良いなって思います。」
〜MINE’s EYE〜
キーワードは「好き」と「楽しむ」。
原点の気持ちだと思う。どんな選手もその競技が好きだから続けてきた。そして好きだから今も競技を継続できている。
アスリートとしての結果と楽しさが必ずしも一致するわけではない。
でも好きで、それが楽しいから頑張ろうという気持ちになる。もっと上手くなろうと思う。
よく比較されるが、アスリートと普通の企業で、普通のサラリーマンとして働く人との間に大差はないと思っている。
両者とも日々の中で大変なこと尽くしで辛いこともたくさんある。上手くいかないことの方が多い世界。
そこで結果を残せるのは、取り組みに対しての想いがあるかどうか。
アスリートはそのスポーツをどれだけ愛しているか。
ビジネスマンはその仕事をどれだけ愛しているか。
これが各業界で活躍するかどうかを分ける。
だから大きな差はなく、原点は同じで、それが楽しいかどうか。
「絶対に自分が楽しいと思うことに取り組む必要がある」
八村選手を見て、強くこう感じた。