2019年のバレーボールW杯、衝撃の5本連続サービスエースで得点を重ね、そのまま試合を決めた19歳がいた。
試合終盤、勝負を決する場面で日本チームに勢いを与えた。若くして大舞台で活躍できるメンタルはいかにして育まれたのだろうか。
どうしたら大事な場面で力を発揮できるだろうか
バレーボール、または自身の人生をポジティブに生きようとする一人の選手に迫ります。
西田 有志 選手
(写真:Ichisei Hiramatsu)
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【ポジティブ思考】でメンタルをカバーする
ワールドカップという最高峰の舞台でも、萎縮することはない。むしろ最大限、力を発揮していく。カナダ戦で見せた5連続サービスエースは圧倒的だった。
大事な局面でハイパフォーマンスを残す裏には、やはりメンタルの強さがあるのだろうか。
「僕、めちゃくちゃメンタル弱かったと思います。相手にやられたらすぐ、落ちるタイプだったので。だから弱いところを隠す、じゃないですけど、どうやっていい方向に持っていくか。そのためにはポジティブになることだと思った」(出典:number1007号 メンタルバイブル2020)
本人の見解は意外なものだった。弱いから、人より意識が強かった。
出した答えは、「弱いから、ポジティブになる」。
西田は極度の負けず嫌いでもある。
「やられたらそのまま終わりたくないし、見返したいって気持ちが強くなった」
初めからメンタルが強靭だったわけではない。
自身が話すように、もともとはメンタルの弱い選手だった。
その弱さを、「高3までは相手に対して意識が向いていた」と分析する。常に自分と他の選手を比較し、ライバルの存在を過剰に意識していた。しかし、当時の心を「子供」と表現できるほどに、今は成長した。
(写真:gongonblog)
飛び込みのマインド
「当時はあまり先を考えていなかったというのも確かにありますが、どうみられても全然気にならなかったです。だって、誰が失敗するかなんてわからないじゃないですか。『絶対失敗するよ』と言われても実感がないし、むしろ何が失敗か、それを知らない状態の方が嫌だったんです。もしも失敗したならば、何が悪かったのかを、他の人の経験と重ねて分析して、自分の型を作ればいいし、それが自分にとっては楽しいっちゃ楽しいな、と思ったんです」
男子バレー界では、大半が高校卒業後は大学に進学して経験を積む。しかし西田はすぐにトップリーグに飛び込んだ。
「西田のように小さいオポジットがVリーグ(日本国内のバレーボールリーグ)で通用するはずがない」
そんな否定的な声も聞こえてきた。しかし、挑戦する前にその後のことは考えなかったのだろう。
西田の頭にはやってみて感じること、挑戦してどう感じるか、そこから作り上げていく自分の【型作り】を楽しんでいるように思える。
(写真:スポーツナビ)
〜まとめ〜
✅他人と比較しない。何事もポジティブに考え、やってから考える
✅失敗かどうかは、実際に経験して自分で得た感覚に基づいて判断する
自身では、「以前はメンタルが弱かった」と分析した。この素直さが西田選手を大きく躍進させた一つの要因ではないだろうか。
弱さに向き合い、プラスに変えようと意識を続けた。
これまでたくさんのアスリートの生き方や考え方に触れてきて、共通している点がある。
・誰よりも自分のことを知っている
これに尽きる。
自分の置かれた状況をいかに好転させるか、どうやったら目の前の壁を打ち破ることができるか。
思考することをやめない姿勢が、壁を打ち破る原動力になっている。
さらに西田選手にはマイナス要素を考えることはしない。実に効率的な脳みその作りになっていると思う。
マイナスについては、そこに飛び込んで実際どうだったか、
これを自分で体験してからどうするかを考える。
この怖いもの知らずの心がますます彼を高みに運んでいくような気がする。