【安定】のマインドを掴む

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2018年、平昌の金メダルをみて、そのプレースタイル、レース後の相手選手への配慮、インタビュー時のことば。一瞬のうちにファンになった。

スピードスケーター 小平奈緒選手

世界のトップに君臨してもなお、自身と向き合い、究極の滑りを追い求めている。

自分を肯定し、信じることが彼女のマインドである。

(Photo by Tom Pennington/Getty Images)

 

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【自己肯定】の軸

小平にとっての大きな転機は’14年にオランダに渡った経験だった。

メダル候補と称されて挑んだ同年のソチ五輪では表彰台に届かず、悔しい想いを経験した。心機一転、渡ったスケート王国のオランダでは、自身の「心」の持ち方が一変した。

「誰かに認められることを求めていたのが大学時代やソチ五輪までの自分でした。でも、オランダへ行って自己肯定できるようになったのです」

オランダにいき、その文化に接して感じたことは、自分を認めるマインドを育もうという理念が、家庭や教育現場に浸透していることだった。

成績や評価を気にすることなく、ここの実力がきちんと身についてから次のレベルに進む。周囲との比較ではなく、その子自身が「何ができるようになったか」にフォーカスして認めてあげることができる。

「人によって達成したときに喜びたいラインはそれぞれです。人は、それぞれにそれぞれの物差しがあり、オランダでは他人の物差しを自分の価値観に置き換えることをしない。そこに日本との違いを感じました」

このマインドの持ち方が小平にとっては新鮮で刺激になった。

 

考え方の変化

小平は【自己肯定】の考え方を持ってから、弱い自分を素直に受け容れることができるようになった。できないことに対して、自分のプライドが傷ついても、それを素直に受け容れるようにシフトし。

「ソチ五輪前までの私は、弱い自分を見せたくないという思いから、99%もしくは80%の自分でごますようなところがありました。101%に挑戦することで次のレベルに到達できれば、それが新しい100%になる。そうやって、自分の心も体もどんどん成長できたのだと思っています」

 

完璧を求めない

というように小平は表現した。

人は弱さからは目を背けたくなる。そこと向き合いたくないのは、当然の心理状態なのかもしれない。しかし小平はその弱さを「受け容れる」ことにした。

「9割の成功でOK」

このように心に猶予を持たせることで、自分を誤魔化すことなく向き合える。

そのためにはまず、弱く、傷がついている自分を知ることが重要だ。そしてそれが見つかったら受け容れる。

これを実践し続けたことで、小平のタイムはどんどん縮まっていった。

      (写真:共同通信) 

 

答えは自分の中にある

「自分」と向き合い続けてきた小平のなかには、確かな「自分」が存在している。

評価の軸は人に決められるものではないと思います。自分の正解が誰かの正解であるとは限らないですし、その逆でもない。それにもっと大切なのは、自分の中に生まれてくる正解をたぐり寄せられるかです」

「自分から強引に変えようとするのではなく、世の中の変化に対して近すぎず遠すぎずという距離を保ちながら、自分の軸をブレさせないようにして生きたいです」

このコロナ禍、アスリートにとっては先の見通しがつかず、競技に集中できない日々も続く。そんな中でも純粋にスポーツに向き合う時間、目の前の時間を大事にする。生きる時間を大事にする意識がある。

周囲の変化に対して、合わせて無理に変わろうという意識ではない。あくまで自分の中にある軸を大事にする。小平の存在が、その発言や考え方からとてつもなく大きく感じる。

 

理想のメンタル

「自分で自分を強くしなきゃというよりは人との関わり合いで学びを編んでいけたら良いと思っています。強さより、安定感や整っているメンタルという方がしっくりきます。人間なので命が懸かっている時は精神力を振り絞らなくればいけない。その時のためにエネルギーをとっておく普段は安定させておいて、必要な時にしっかり使うという感覚ですね」

単なる強い、弱いではない。安定したメンタルが彼女の理想にある。鍛えるというよりかは「研ぎ澄ます」という印象だ。

たくさんの人との関わりやたくさんの経験が彼女の安定を支えている。

 

 

〜まとめ〜

弱さを見せることは恥ずかしいことじゃない

正解は自分の中から手繰り寄せる

 

小平選手は自分を持っており、そして自分を大事にしている印象を受けた。それは自身がオランダで感じた「自己肯定」の価値観が大きく影響している。

他人の価値観を自分の価値観に置き換えることはしない、この思考はスポーツ以外の場面でも重要になるのではないだろうか。

多様性」が叫ばれるこの時代に、多様な価値観が重要視される。

自分の価値観や考えを、自分の中から生み出し表現することが、重要であると教えてくれている。

 

「そもそも私がスポーツに取り組むうえで大切にしているのは、大会での結果だけではありません。日々のトレーニングの中でスポーツが上達するところに面白さを感じているので、大会という場が亡くなったとしても、今のところは心にポッカリ穴が開いてしまうことはないです」

そして小平選手は「スポーツの上達」にフォーカスしていると発言した。

私たちが暮らす日本では、ついつい他人との評価や順位、結果を気にしてしまう現状がある。他人ができることを自分と比較して、できない自分を恥ずかしく、避けたいような気持ちになることもある。

しかし、スポーツ・トレーニングを通じて自分の成長や上達に意識を向けることができれば、他人や他の要因は関係ない。こうやって自分の競技や仕事に取り組むことができれば、「安定」したマインドが手に入るかもしれない。

 

 

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