2001年生まれ。
若干18歳の若武者が、大きな姿でプロの一流選手たちを驚かせている。
「最速163km」
プロ入り前、ドラフトでは大変な騒ぎ出会ったが、今もなおその期待値の大きさは変わらない。
佐々木朗希という男
(photo by Ohtomo Yoshiyuki)
佐々木は岩手県の生まれ。
’11年に起きた東日本大震災の災害をもろに受けた。大津波が住まいの陸前高田市を襲い、甚大な被害。父・功太さんと祖父母を亡くした。家も街も流される。失意の中、母の陽子さんは懸命に働き、3兄弟を育てた。細かな教育方針はなかったが、震災前から一点だけにはこだわっていた。
「男の子がスポーツするなら、背の高い方が何かと有利かな」
2000年代初頭に岩手県内の教育界で、ある噂が口コミで広まった。「早寝する子は大きく育つ」と。夜10時と11時半に成長ホルモンが活発に出る。保育士からアドバイスされ、陽子さんは早速実践に移した。専門家によると、骨や筋肉を作る成長ホルモンの分泌ピークは就寝2〜3時間後。早朝3時ごろに分泌される抑制物質にも、早寝ならば影響を受けないという。
幼少期当時だが、鮮明に思い出せる。
「兄も一緒でした。夜8時にはもう布団に入っていたので、9時前には睡眠に入っていたのかなと」
その頃、土曜夜9時に人気テレビドラマ「怪物くん」が放送されていて、週明けの小学校では教室の話題の中心になっていたというが「話についていけなかった」という記憶しかない。
少年時代を回想しながら、今もなお早寝を心掛けている18歳は思う。
「球速は割と体格に関わってくるのかなと。僕は身長が高かったので、おかげで少しは物理的に速く投げられる体になった。小さい時も、いっぱい食べていっぱい寝たので、それで大きくなった。今につながっているのかなと思います」
長身であると投げる球のスピードがアップするかどうかは、科学的にはっきりと証明されているわけではない。しかし、佐々木自身が探究心も持ち続け、自身のレベルを高めてきたことは確かだ。
左足を顔付近まで高く上げるフォームが急速アップの推進力になっている、という意見も多い。180度開脚もできるほどの抜群の柔軟性も、生まれ持ったものではない。中3時のケガがターニングポイントになった。成長痛に起因するもので、股関節などに違和感を抱えるようになった。
「それまでは(ストレッチなどは)やらなかった。学校の練習だけを頑張るようにして、家では何もしないようにしてました。
続けるようになって、結果が出てきて。続けることが大事なんだなと感じました」
佐々木の投球フォーム、そして「163」というスピードは、こうした日々の取り組みの継続によって生まれている。
まとめ:【継続は力なり】
✅幼少期、誰よりも早く寝たことで長身を手に入れた(直接的に早寝が長身につながったかは明確ではないが、早く寝る習慣があったことは確か)
✅継続することによる新たな発見が、前進のきっかけになった
周りはついつい期待してしまうかもしれない。18歳で163kmを出したのなら、将来は170kmが出るんではないか!?
プロに入り、高校生の頃より大きく広い世界になっても、「続けられる」人が強い。
そしてその「続けられる」原動力は、佐々木の向上心と感じている。
いろんな面で、多くの人に注目される選手であるだけに、自分のすべきことを淡々と継続できるかが鍵になりそうだ。多くのことに振り回されず、どんと構える姿勢も必要かもしれない。