毎年お正月の風物詩、「箱根駅伝」。
今年も大いに盛り上がりましたね。
今年は10区の最終区間で駒澤大学が創価大学を抜き、
20年ぶりの10区での逆転優勝という劇的な結末でした。
そんな今大会ですが、駒澤大学の総合優勝で幕を閉じ、
その裏では同大学の努力と葛藤がありました。
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駒澤大学優勝の舞台裏
(大学スポーツ 写真:藤井みさ)
「箱根駅伝の目標は総合3位以内」
駒澤大学のレース前の目標でした。
結局、同校13年ぶりの総合優勝という華々しい結果で箱根駅伝を終えた後も、謙虚な印象でした。
駒澤大の大八木弘明監督は、先も見据えた上でこのように発言しています。
「優勝はできましたが、私たちのチームはまだ若いチームなので、3番以内に入れればいいのかなっていう思いはありました。チャレンジャーという気持ちで、今回、往路、復路に臨みました」
未来を見据えた采配
今大会、実は駒澤大学の走者で4年生は、走者10人中1人のみでした。
「4年生を外し、下級生を使う采配は苦しかった」
もともと1区に加藤淳、8区に伊東颯汰、10区に神戸駿介と実績のある4年生を12月29日の区間エントリーで登録しながら、いずれも当日に選手変更。出走した4年生は、3区の小林歩ただ一人。
当日、1区・白鳥哲汰、5区・鈴木芽吹、7区・花尾恭輔と3人の1年生を起用。また、2年生と3年生も3人ずつという布陣で臨むことになりました。
「4年生も、一生懸命に下級生を引っ張ってくれていたんですけど、若い力を試してみたいという思いもあった。今回だけで終わりではないので。同じくらいの調子であれば、勢いのある下級生を使おうと思いました。温情で4年生を使ってあげたいっていう思いもありましたけど」
この采配、みなさんにはどのように映りますか?
非情にも映るかもしれませんが、指揮官にとっても苦渋の決断でした。
「本当にギリギリまで、12月30日ぐらいまで悩みました。選ぶのは苦しいところがありました」と言う。
結果として、その采配は的中。下級生が上級生の想いも背負い、立派なレースを敢行する運びとなったのです。
ただ今回の優勝という最高の結果が、名将にとってはある意味で“想定外”でした。
“優勝”は目指していなかった!?
「往路を3位で終えて、優勝するにはまだ遠いのかなっていう思いがありました」
往路をトップと2分21秒差の3位で折り返すと、復路を走るメンバーには「3番を確保しよう」と指示を送ったのです。
6区で2位に浮上しても、各区間の選手には「2番を確保」と上方修正しただけで、“優勝を目指そう”と欲をかくことはせず。9区を終えた時点では2位を覚悟していました。アンカーの石川拓慎(3年)には「区間賞狙いで、思い切っていきなさい」と言葉を送っていたのです。
初めて優勝を意識したのは、10区10km過ぎ。10kmから15kmの5kmでみるみる創価大との差は詰まっていき、15km過ぎで初めて、運営管理車から石川に「区間賞と優勝を狙っていこう」と檄を送ったのです。
大八木監督の熱い、想いのこもった声は、選手の耳によく届きます。
20kmの声がけで、「男だろ!」の声が石川に届くと、「いい感じで切り替えることができた」と石川は、20.9kmでついに逆転。残り2.1kmで首位交代です。
石川選手はそのまま首位をキープして見事トップでゴールを切りました。
駅伝の声かけって選手に聞こえいているのかな?という疑問もありましたが、
思いが強かったりすると届くんですね。
今回の箱根駅伝は通過点
「勝ったばかりで来年度のことを言うのもなんですけど、当然全日本は連覇したいですし、出雲駅伝も開催されれば勝ちたい。三大駅伝をとりにいきたいと思います」
学生駅伝界には末尾が“0”の年度に三冠校が誕生するという摩訶不思議な法則がある。今年度はまさにその法則に当てはまるシーズンだった。新型コロナウイルスの感染拡大により出雲駅伝が中止になり、思わぬ形でその法則は破られたが、全日本大学駅伝を6年ぶりに制した駒澤大が箱根駅伝でも頂点に立ち二冠を成し遂げた。そして、来季こそ三冠を狙いにいく。思わぬ形で勝利を手にした今回の箱根駅伝は序章に過ぎない。平成の常勝軍団が、令和の時代にもいよいよ牙を剥く。(Number Web・和田悟志)
学生スポーツは勢いが一つのポイントだったりします。
陸上競技の長距離部門では、最も注目される箱根駅伝で13年間遠のいていた優勝を手にしたことで、
駒澤大学に勢いがついてくるのではないでしょうか。
優勝という結果を手にすることで選手にはいくつかの変化が生まれます。
・責任
・期待
・王者としてのプライド
箱根前とは全く違う心境で、環境でレースや練習に取り組むことになります。
その圧や変化を選手自身が楽しめるかどうか。
新たな歴史が紡がれそうですね。
時代がもたらす変化
駒大の大八木監督は、「昔と今の選手の違い」について感じていることがあります。
「やはり違いますね。今の子の方が競技に対する能力は高いんです。なにより我々の時代とはスピードが違いますし、素晴らしい記録も出すんですけど、その一方で勝負となったときのモロさも感じます。
器用にできる反面、我慢することがなかなかできない。外で遊んで育っていないから、体もあまり丈夫じゃないしね。言葉ひとつかけるにしても、今の子たちはこっちが昔のジャブみたいな感じで言っているのに一発KOですから(苦笑)。」(Number Web
入部した学生にも、常に“自立”を促し、そのうえで指導者としての在り方にも言及している。
「ただ大学に入って、駅伝を走ってそれで満足なのかということですよね。自分が大学で何をしたいのか。5000mや10000mといったトラック種目で上を目指すのか、マラソンをやりたいのか。そういう選択肢を今は指導者がきちんと教えていかなくちゃいけない」
指導者が意識すべきこと
「やはり選手をよく見ることです。人間だから良いとき悪いときがありますけど、不調が長引けば本人も辛いし、早くそれを乗り越えられるように指導していく。そういう面をきちんと見ておかないとダメだなという気はしますね。」
大八木監督が指導者として優れている点は、選手の体調を細かく把握しているポイントも一つあります。
選手一人ひとりの体調はもちろん、細かい仕草や様子から心の調子までを観察しているので、
見逃しや漏れが少ないんでしょうね。
その観察眼があるので、選手のそれぞれに寄り添った臨機応変な指導ができますね。
✔️選手の体調を認識する
よく見て、よく観察すること。
選手を、選手自身よりも監督が知っているほどの勢いで見ているのかもしれません。
まとめ:監督は選手の全てを背負う気持ちでいる
✅監督は選手のことを誰よりも知ろうとしている
大前提、選手と指導者に最も重要な要素は“信頼関係”です。
ここを紡ぐためには、多くの時間を要することは確かなのですが、
“選手をよく観察する”ことはできそうですね。
言葉にしていなくとも選手はどこかでメッセージを送っているのかもしれません。
あとは、采配がどうこうではない点。
これも、どんな采配だったかではなく、
“どんな監督”が采配したのかってのがポイントだなと。
よく選手を見ている大八木監督が決めた決断なら、と4年生も納得しているのではないでしょうか。